correspondence: 鈴木宏平 02

2011年 12月 8日   /   correspondence, interview
村で自転車を駆っているいるのは我が家か中学生のみ

To: 鈴木宏平

From: 小川直人

 

西粟倉村に家族そろっての生活が本格的にはじまって、少し落ち着きましたか?
ただいまlogue主催のワークショップ cultivation 04 の最中です。今回はArduinoを使ったサウンドデバイスをつくっていて、例によってマニアックな内容に6人の少数精鋭です。統計的な有意性はない数ですが意外にも半数が女性。さらには、子どもにおもちゃを自作して見せたいという方まで来て驚いています。僕も子どものおもちゃにmonotoronを買い与えたりしていますが、さすがにつくることまでには至らない。

ところで、来月、地域の子育てママの集まりに呼ばれることになりました。育児休暇に入ってからはじめて”イクメン”としての話です。当初はもっとそんなことがあるのではないかと予想していたのですが、震災の影響か、まったく今までそんなオファーはありませんでした(苦笑)。ちなみに、もうひとつ呼ばれそうなものがあったのですが、「あの人は特殊すぎてあまり参考にならないのではないか」ということで却下されたとのこと。個人的にはやや心外です。

鈴木さんも相当特殊な部類に思われるのではないかと思いますが、西粟倉村には同じように移住してきた人などいるのでしょうか? 上のお子さんの授業参観などに出たりしてみましたか?(背も高いから相当目立つのではないかと思います)。

 


To: 小川直人

From: 鈴木宏平

 

1 1月の後半に東京からレンタカーのトラックで西粟倉村へと引っ越して来ました。道中、季節はずれの台風の様な嵐を真正面に受けながらも、13時間かけて辿り着いた新居では天の川が広がる星空が運転手を務めた友人を労ってくれました。たった3ヶ月間の単身赴任でしたが、改めて家族は一緒にいた方がいいのだなと気付かされました。3ヶ月の間に、下の子は歩き始め、上の子は岡山弁に訛っている。僕はその過程を見逃してしまいました。子どもと密接な付き合いが出来るのを10歳までとすれば、あっという間にこどもは親から離れて行くのですね。今は未開封の段ボールを横目で見つつも、毎朝上の子を学校に送り出してから始まる日常の日々を送っています。

昼間、村の人から引っ越し祝いにと立派な藻屑蟹を頂く。その帰り道に車から呼び止められ、おすそわけに大根も頂く。それならばと晩飯はかに汁に決まる。村での生活はこうして思いがけない出来事の連続のようです。僕の身に起きた変化は、普段履きの靴がこれまでのスウェード地のデザートブーツから、底の厚いトレッキングシューズになりました。何気ないことですが、自分にとっては新鮮で分かりやすい、生活環境への無意識の対応なのでしょう。

電車は単線の一両編成

電車は単線の一両編成

さて、その後小川さんの“イクメン”としてのデビューはいかがでしたか? 気がつけばメディアでは“イクメン”という言葉が生まれ、社会的に認知されている様な伝え方がされていますが、実体験では平日の昼間から子どもを連れて散歩すると不思議な視線を感じたものです。偶然ですが先週上の子の授業参観があったので、早速一家で自転車を走らせ小学校へと行って来ました。1年生の教室に生徒と先生、父兄が集まっても20人程ですが、空間としての密度は丁度いいのかもしれません。40人学級で育った僕と、全校生徒60人の学校で学ぶ息子とでは、きっと違った感覚を身につけていくのでしょう。13年後、酒を酌み交わす息子の姿がますます楽しみになります。

そういえば授業も終わり校舎から外へ出ると、同じく下校時間となった子ども達がぞろぞろ校庭に集まって来ました。そのうち、やんちゃな男子達が何人も僕の隣に並び、背比べをして、
「でけー!!」
と決まり文句を残し去って行きました。まったく子どもは素直だ。今では西粟倉のガリバー気分を楽しんでいます。

今年も残すところ一月を切りました。西粟倉もそろそろ雪の季節が始まるとのことです。仙台とはまた違った寒さの冬になることでしょう。次の便りの際は、一面の雪景色を送りたいと思います。

早速歓迎会が開かれた

早速歓迎会が開かれた