第8回目のlounge logueは、第6回目と同じ会場、宮城県松島町の松華堂菓子店にて開催されました。お招きしたのは「池田修三版画展 つながり —象潟から松島へ—」の実行委員会の方々。この版画展は、松島町と夫婦町である秋田県の象潟の作家、故・池田修三氏の版画作品を、町のあちらこちらに展示するという、大変ユニークな展覧会でした。またトークやライブ、まちあるきツアーやお隣塩竈市でのワークショップなど、多様なイベントも開催され、期間中は町が展覧会ムードに包まれました。
私自身も家族とともにこの展覧会を楽しませてもらったのですが、カフェや土産屋さん、役場まで、様々な場に作品が展示されており、普段はあまり足を伸ばさない町の方々を散策しながら作品を鑑賞するという、不思議な体験となったことが印象的でした。
実行委員会の方々のお話はとても自然で、楽しく、緩やかなものでした。自治体を巻き込みつつ町全体をギャラリー化してしまう、という一見高く思えるハードルを、「自らが楽しんでしまう」というエネルギーで軽々と突破しているかのように、会場には笑顔があふれていました。司会進行の小川(実行委員会にも参加したlogueメンバー)の言葉の端々からも、おそらく企画や運営自体は決して易しいものではなかっただろうと想像するのですが、楽しむことの強さをひしひしと感じました。
こうしたいわば「ふんわり」した実行委員会の方々が作り出した展覧会は、決して「ふんわり」では片付けられない、様々な試みが随所にちりばめられていました。そしてその試みにもっとも驚いたのが、自治体をはじめ地元の人間だったのではないかと思います。
その一つの代表例として、松島博物館の活用があげられます。今回の展覧会のメイン会場ともいえる松島博物館は、観光地のど真ん中にありながらも、これまで十数年の間、いわば放置されてきた施設。私をはじめ地元の人間としては、あまりお勧めできない場所であったのです。ネガティブな場を見事に活用し、場の新しい価値、もしくは本来持っていた価値を改めて認識させてしまう作品の力。展覧会の力、ひいてはアートの力というものをこの版画展は松島町という場に気付かせたのではないかと思います。
宮城県の松島町は、東北の中でも代表的な観光地の一つ。しかし震災以降「観光」のあり方は変化してきているのではないでしょうか。集約された消費型観光ではなく、場本来の価値をゆっくりと楽しむ観光へ。同地で2011年から開催されている「松島流灯会 海の盆」といった祭りでもこうした信念が掲げらている中、この池田修三版画展は、まさにそうした流れをひときわ強く感じさせるアートプロジェクトだったのではないかと思います。