7回目となるlounge logueは、やや趣を変えてせんだいメディアテーク7階スタジオシアターでおこないました。今回のゲストである写真家の田村尚子さんと作品『ソローニュの森』に加え、本の舞台となったフランスのラ・ボルト精神科病院で彼女が写真とともに撮り続けた映像を見るためです。
『ソローニュの森』は、写真としての魅力はもちろん、cozfish(祖父江慎+小川あずさ)による本のデザインも、また、医学専門の出版社から出た写真集であるということ自体にも興味を持っていました。どのようにしてこの作品が生まれ、どのように人々に受け止められているのか、病院内で発表した写真と映像を追体験しながら田村さんの話を聞くうちに見えてきたのは、作品が訴えかけてくる正常と異常の境界への問いかけだけではなく、こうした写真集が世に出され問われていく過程での専門領域やコミュニティという境界への問いかけです。
私たちのいう「コミュニティ」は自分自身がいる(見える)場か、もしくは、和訳できないまま与えられた単なる言葉である場合が多々あります。しかし、この日会場に集まった人たちの関心や専門がバラバラであったように、複数の異なるコミュニティが重なり合う点にこの写真集があった、あるいは、一冊の写真集が異なるコミュニティを引き寄せたように感じられました。
もしかしたら、写真集としては、アートと割り切ったり、医学と割り切ったりするほうが、強く遠くへ跳んだのかもしれません。しかし、異なるプロたちが組むことで単純な強度や飛距離だけにならないものを作り上げたことが、この試みの大きな魅力なのだろうとあらためて思いました。