report: lounge logue 06

2013年 04月 13日   /   lounge logue, report
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3月23日、6回目のlounge logueを開催しました。お招きしたのは『インフォグラフィックス——情報をデザインする視点と表現』(発行:誠文堂新光社)でも知られる(株)チューブグラフィックスの木村博之さん。会場は松島にある松華堂菓子店ということで、はじめての出張lounge logueとなりました。重要文化財でもある五大堂をバックに、情報の可視化について示唆に富んだお話を聞くことが出来ました。

インフォグラフィックスとは情報を適切に伝えるための見取り図のようなものです。見落としがちな情報にスポットあて、複雑な構造をひもとき、見る人の理解を促進させます。木村氏はこの分野のプロフェッショナル。日経新聞での連載をはじめとして様々な分野で活躍されています。

木村氏のレクチャーは、彼の出身地である女川を襲った巨大津波の話からはじまりました。数十年ごとに繰り返される津波の恐怖が、なぜ伝承として適切に伝わっていなかったのか。一体どうすればこの津波を後世に伝えられるのか。情報をしっかり伝えられていれば、もっと多くの命を助けられたのではないか。木村氏はこうした世代を超えた情報伝達に、ライフワークとして取り組み始めているとの事でした。

その後話は、インフォグラフィックス的思考法へと展開。情報を取捨選択し、多面的に捉えていく重要性を解説されました。特に印象的だったのが「もう一つの眼をもつ」というお話。木村氏は常に、自分以外の視点を意識されているとの事でした。例えば、電車で向かい側に座った人がどんな光景を見ているのか、部屋の天井の四隅から部屋を見たら何が見えるのか。そうした多数の視点を常に意識すれば、気づきにくいことや、新しい発見があるという事なのです。

実は木村氏とは当日の午前中、logueが講師を務める「せんだいスクール・オブ・デザイン」のリサーチとして、宮城野区文化センターの視察にも同行していただいたのですが、その際も他のメンバーとは異なる行動をとりながら、独自の視点で問題を発見されていたことを思い出したのでした。

今回は比較的デザイナーの方の参加が多かったようなのですが、いわゆるデザインに直接従事していない、地元松島の方々にも多数参加していただきました。質疑応答の際、行政機関に勤める方が情報伝達の難しさについて質問し、木村氏がアドバイスするという展開もあり、インフォグラフィックス的思考が、様々な分野で応用できる事を改めて感じ取ることができました。もし情報を俯瞰するための「多数の視点」を多くの人が獲得できるなら、社会が変わっていくのではないか、そんな予感を感じるlounge logueとなりました。